トポロジー

1973年4月に、束京で開かれた多様体及びそれに関連したトポロジーの話題についての国際会議の出席者の中には、フランスの数学者ルネ・トムと、イギリスの数学者クリストファー・ジーマンが含まれていましたが、トムはカタストロフィーの理論、つまり破局の理論の創始者であり、ジーマンはその協力者であったために、当然、この破局の理論が一つの大きな話題となりましたが、これはマスコミにもとり上げられて、雑誌にも登場することになりました。ルネ・トムは、1923年生まれのフランスの数学者で、トポロジーで有名なコボルディスムの理論を創始し、その業績によって1958年にフィールズ賞を得ました。トムは1961年にイギリスのジーマン教授が発表した論文、頭脳と視覚認識のトポロジーに刺激されて、トポロジーが数学以外の科学に応用される可能性を認め、まずその生物学へめ応用を試みました。そのために彼はまず、イギリスの生物学者ワーディントンから生物学を学び、トポロジーにおける写像の特異点の分類の理論を、生物学の種々の現象にあてはめてみるという研究をはじめました。彼は他の生物学者の協力も得て、1968年にその成果を、雑誌トポロジーに発表しました。このように、トポロジーにおける写像の特異点の理論を、特に生物界における種々の変化や進歩の様子の解明にあてはめようとするのが破局の理論です。いくつかの連続的に変る要因に支配される現象が、急激に変化する場合、すなわちカタストロフィー的に変化する場合において、その変化の様子の解明に、トポロジーにおける写像の特異点の理論をあてはめようとするのが、この破局の理論です。今までは自然現象の説明に最も多く利用されたのは、主としてニュートンの理論にもとづいて立てられた徴分方程式の理論であった、ということができます。しかし、生物界、または人間の世界に起こる現象の中には、きちんとした徴分方程式の立てられないものが多く、破局の理論はこのような場合にも、トポロジーを用いることによって、定性的な結論を得ようとするのを目的としています。

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